誹謗中傷やネット上の被害への対処について
最近弊所にはメールやオンラインサイトでの誹謗中傷や、個人情報の漏洩、リベンジポルノといった被害に遭われた方からのお問合せが増えています。Defamation Actという法律は存在するものの、当地の法律は改正の必要が叫ばれてから長い期間が経過し、その間ソーシャルメディアの多様化も進み、法律が現状に追い付いていないという現実があります。また、些末なケースが裁判に持ち込まれることで裁判が大幅に遅延し、本来救済の必要な原告が裁判を開始するまでに長期間待たなくてはならないという事実もあります。
誹謗中傷を原因として原告となれるのは、基本的に個人または小企業に限られます。また、加害者が確定できなくてはなりません。当然裁判を起こすには費用と時間がかかるため、現実にはまず誹謗中傷を行った相手に対し苦情を出し、またオンライン上のプラットフォームに対し内容の削除を求める、といった対応が中心となります。インターネットサイトでは匿名で自分の意見を伝えることができるというプラスの面と、個人が特定されにくい点を悪用し、事実無根の内容を述べたり、無責任な意見を述べたりするという悪い面が共存しています。一度アップロードされた内容はたとえ本人であっても簡単に消去・抹消することはできず、ターゲットとなった人物を大きく傷つけたりするかもしれません。
リベンジポルノなどの場合、インターネットに写真などをアップロードして相手を脅す、何かを見返りに強要するといったことは刑事犯罪行為となり連邦法の管轄となりますが、現実的な対処法としては加害者が居住する州警察に対応してもらうことになるでしょう。その場合、被害者が証拠提出とともに警察で調書を作成し、警察に捜査を依頼することが必要となります。いうまでもなく、加害者と被害者が国を跨いでいる場合、こうした犯罪行為を止めることは大変困難なことです。
7月末に各州の司法長官(Attorney General)による会議が行われ、速やかに改正法を導入することが合意されました。規定具体内容は、誹謗中傷として訴えを起こすためには重大な損害が必要とされ、訴訟前に原告側からの通知(concern notices)が義務づけられるものとなります。つまり、裁判が開始される前に、原告の問題を被告側に提示することにより、被告側に問題を是正する機会を与えることを目的としたものとなります。
また、誹謗中傷媒体は一つというルールが導入されることになります。現在は同じ内容の誹謗中傷材料がいったんインターネット上に上がると、同じ材料がダウンロードされる度に訴訟を起こすことが可能になっています。ダウンロード期間にも制限がなく、そのため訴訟が起こしやすい環境となっています。改正案では訴訟できるのは、アップロードから1年までの期限がつくことになります。こうした改正案は被害者にとっては裁判のハードルを上げているような印象を与えるかもしれませんが、これは些末なケースを排除することが目的であり、実際に損害を受けている被害者のケースの裁判開始を早めることにつながります。刑事犯罪の対象になるケースでは、警察の捜査を促すことで脅しの材料となっている写真やデータの削除や加害者の起訴に繋げることで抑止となり根本的な解決を図ることが重要視されているわけです。