
遺言書作成時によくある質問①
遺言書作成時にお問合せの多い内容について取り上げ解説します。1. 日本にも資産がある場合日本にも不動産や銀行預金、株などの資産を持っている場合、オーストラリアと日本は法制度が全く異なりますので資産のあるそれぞれの国で遺言書を作成しておくことをお勧めしています。どちらの国で亡くなるか、不動産があるかどうかなど、個々の事情により一方の国で作成した遺言書だけで全ての遺産をカバーするには不十分である可能性が高く、相続手続きが複雑になるリスクが高くなるからです。International Willというものも存在しますが、日本はその協定に参加しておりませんし、全ての国で有効となるように遺言書の内容、様式を担保することは簡単ではありません。そのため、それぞれ資産のある国ごとに有効な遺言書を作成しておく方が安全です。2....
家庭内暴力の加害者への厳罰化について
昨今家庭内暴力が大きな社会問題となっています。家庭内暴力についての社会的な周知が広がったことにより、被害者も声を上げることが増え、警察も被害者に代わって積極的に裁判所への申し立てを行っています。裁判所による暴力行為の禁止や接近禁止命令で問題が解決する場合もある一方、加害者が裁判所の命令に違反して逮捕・起訴という経過を辿る場合もあります。一部の加害者はこうしたリスクがあっても被害者への暴力行為を止めることができず、最終的に被害者を殺害してしまうといった悲しいケースが後を絶ちません。現状の制度では加害者が野放しになっており、被害者保護が不十分であるという批判に対し、各州政府は対策を強化しています。NSW州は2024年2月1日、the Crimes (Domestic and Personal Violence) Act 2007 に”domestic...
最近のオーストラリアの留学生受け入れ動向について
オーストラリアは長年、海外留学を目指す人々にとって人気の留学先として安定した地位を築いてきました。独立行政法人日本学生支援機構が2022年に実施した「日本人学生留学状況調査」によると、オーストラリアへの日本人留学生の数は6,187人で、アメリカ、カナダに次いで3番目に多いとされています。しかし、最近の連邦政府の政権交代やポストコロナ期以降の労働市場、経済、住宅事情の変化により、留学生への対応が変わって来ています。本記事では、最新のオーストラリアの留学生政策についてまとめます。コロナ禍の影響2020年初頭から始まった新型コロナウイルスのパンデミックは、オーストラリアの留学生市場に大打撃を与えました。それにより、教育機関など留学関連産業の財政にも深刻な影響がもたらされました。パンデミック中、オーストラリア政府は国内にいる留学生に対して就労時間数の制限緩和など柔軟な政策を導入していましたが...
家族法の改正について
5月6日、家族法の改正法が施行します。現在日本では選択的共同親権の導入が衆議院を通過したことが大きく報じられていますが、今回の法改正では2006年に導入された『平等な共同親責任』という推定原則の廃止が決まりました。平等な共同親責任原則は、家庭内暴力などの場合を除き、教育、宗教、住む場所、医療といった子供にとって重要な決定を両親が共同で決める責任を負うことが子供にとって最大の利益となるという考え方です。2006年にこの推定原則が導入された背景には、それまで母親が優先され、父親の子供の養育への関与がないがしろにされてきたという声に応える目的がありました。それから過去20年近く、家庭裁判所はこの原則に基づいて養育についての紛争に対応してきました。今回この原則が廃止されることになった大きな原因は、この原則が誤って理解されてきたケースが多かったからです。元来、子供に関する重要な決定について共同...
The Fair Work Actの大幅改正について
連邦政府は2023年から既存の法の抜け道を塞ぐとして大幅な雇用法の改正を行っており、今年も次々と新たなルールが施行されることになっています。その中でも特に重要な改正内容について説明します。2023年6月6日から、従業員が雇用主に対し、フレックス制や、リモートワーク、ジョブシェアリングなど柔軟な働き方を請求できる権利が拡大されました。改正前はこうした働き方を請求できるのは保護者、介護者、55歳以上、障害がある方に限定されていましたが、法改正により家庭内暴力を経験していたり、妊娠している従業員にも同様の権利が認められるようになりました。こうしたアレンジを希望する場合、従業員は書面でその理由とどのような働き方を希望するかを雇用主に提出し、雇用主は21日以内に書面で回答することが求められます。もし雇用主が請求を却下する場合には事前に本人と話し合いを行い、真摯に解決策を探ることが必要です。申請...
相続、財産分割を理由とする外国人への不動産譲渡について
ご存じの通り、当地で永住者以外の外国人が不動産を購入する際には、通常Foreign Investment Review...
オーストラリアから日本にペットの犬を空輸する場合
皆さんは愛犬や愛猫を海外に連れて行った経験はあるでしょうか。例えば日本への帰国の際、ペットホテルに預けるのではなく気軽に一緒に旅行することができればきっと楽しいはずです。また、永久帰国の際、ペットと一緒に帰国できればと思う方もあるでしょう。しかし実際には、動物を海外に連れ出すには大変煩雑な手続きを踏むことになります。今回はペット犬に焦点を当て、日本に向けた空輸手順について解説したいと思います。オーストラリアから日本への出国日程を決める まず、オーストラリアから日本へ行く日程を確定したら、次に航空会社に連絡を取り、搭乗予定便に犬を載せることが出来るかどうかを確認します。ペットは貨物として輸送されますので、貨物部分に余裕があることが確認される必要があります。また、ペット犬が航空会社が輸送可能とする犬の条件に適合するかどうかについても航空券購入前に確認します。...
名前の変更
英語では発音が難しかったり、電話口で綴るのが大変だったり、特殊な意味の言葉に聞こえてしまったり、と自分の名前に関してあらゆる場面で面倒な思いをしたことがある方はきっと筆者だけではないと思います。オーストラリアでは比較的簡単に名前を変更することができます。今回は本名と異なる名前を使用することについての法律についてお伝えしたいと思います。日常での使用による変更ニックネームをそのまま名刺に使用している人を多く見かけることと思いますが、こうした日常的に異なる名前を使用することは、詐欺目的や他人を陥れる意図がないことを前提にすれば、法律上何の問題もありません。ある日いきなりメガスターの名前を自分の通称として名乗り始めたとしても、相手のわずかな動揺をやり過ごしさえすれば、あとは新しい自分として普通に生活をすることができます。但し、残念ながら銀行では本名でしか口座を開設することはできません。変更登...
日本から当地にある銀行口座にアクセスする際の問題点
当地に以前留学や仕事で滞在した方、永住している家族を訪問した方など、オーストラリアの金利が日本よりも有利な時代に当地で銀行口座を開設し、まとまった金額を銀行に残したまま日本に帰国した方々からのお問い合わせを受けることがあります。銀行口座を閉鎖して日本の自分の口座に送金したい、資金の一部を動かしたい、確定申告で必要なので利子収入を知りたいが銀行からのステートメントが届かない、などの場合です。インターネットバンキングを利用できれば良いのですが、携帯番号での認証が必要であったりなど、ネットバンキングを設定することもできない場合、資金を動かしたり情報を更新したりすることができません。このような場合、通常は電話での指示や支店での対面取引をすることになりますが、健康上の理由などで当地に来ることのできない方、英語が不得意な方は、日本から銀行に電話をするしかありません。その場合日本語の通訳を銀行がア...
相続:夫婦やパートナーが同時に亡くなった場合
弊所で遺言書作成を受任する場合、夫婦やパートナー同士で同時に作成するケースが大半です。その場合、遺産の管財人、相続人としてお互いを指名し、配偶者が亡くなってしまう場合に備え、子供、兄弟姉妹、両親などを代理の管財人や二次相続人に指名してもらうのが一般的です。今回は事故などで二人が同時に亡くなった場合の相続について解説します。例として、共有名義の銀行口座と自宅不動産を持ち、それぞれの単独名義の銀行口座や株式などを保有している夫婦のケースを考えてみます。この夫婦には子供はなく、夫には母親と弟が、妻には両親と姉がいるとしましょう。遺言書ではお互いを管財人、相続人として指名しています。もし夫が病気で死亡し、妻が残された場合には、夫の単独名義の遺産は遺言により妻が全て相続します。金額によっては裁判所による遺言検認手続きが必要になるでしょう。共有資産については遺言書に関係なく、生存する共有名義人で...
NSW州で不動産を購入する際の『200日ルール』とは
オーストラリア国籍、永住権を持たない人が当地居住用不動産を単独で購入する場合、Foreign Investment Review Board(“FIRB”)からの認可が必要であることはご存じだと思います。認可が取れたとしても、基本的に外国人が購入できるのは国内の不動産供給を妨げないよう投資向けの新しい居住用住宅に限定されています。100万ドル以下の物件のFIRB認可申請費用は2022年7月29日現在$13,200と高額で、今後も毎年値上がりすることが見込まれています。購入の認可が下りても、外国人には更に外国人追加印紙税が課されます。税率はVIC州、NSW州、TAS州が8%、その他の州が7%となっています。それだけの費用を支払って物件を購入した後も、Land...