Pre-nupとは何か、署名した場合の効力とは
通称『Pre-nup:プリナップ』と呼ばれているものは、家族法に基づいて作成されるFinancial Agreementのことで、法的効力のある合意書です。関係破綻時にそれぞれの財産を分配対象としないことに合意しあうための書類で、結婚・De facto関係開始前に二人の間で作成する書類のことです。結婚前からの貯金は一緒にされたくない、親から受け継いだ財産を守りたい、将来独身に戻った時でも最低限の資金は確保しておきたい、前のパートナーとの子供に必ず渡したい、などとした都合が考えられますが、『合意書』であるわけですので、二人のコンセンサスが不可欠です。こちらと相手の都合がぴったり合っていればよいのですが、相手の財産の価値が自分のものより大きかったり、元のパートナーに財産分与で身ぐるみはがされたから同じ目にあいたくない、などと言われたりしたら、この人と結婚するのやめようかなと思うかもしれません。そこまで思うことはなかったとしても、そもそも結婚時に別れる時のことを考えさせられることが興ざめであるのは間違いないでしょう。でもPre-nupにサインするというのはそういうことなのです。
なお、Pre-nupには今後二人で作っていく財産の分配方法を規定することもできますので、実際に仲が悪くなった時に相手と争うこととその費用を考えたら、Pre-nupは仲が良い時に分配規定を冷静に決めておけるのでメリットは大いにあります。その規定を設定するためには、起こりうる様々な状況を想定します。生まれてくる子供の数、子供や自分達の疾病、障害、失業、死亡、など考えられる限りの状況を想定しますが、クリスタルボールがあるわけではありません。また、子供が生まれた場合相手の合意がない限り日本で子供を養育することはできなくなりますが、この事実をハンデだと感じることがあるとすれば、それはおそらく別れる時でしょう。でもこうした『ハンデ』がPre-nup作成時に考慮され規定に盛り込まれることはなかなかありません。Pre-nupのサインは自由意志でなされる必要がありますが、永住権申請のことが頭の中を占めていないか、相手とのパワーバランスが崩れていないか、一度冷静に考えてみる必要があるかもしれません。