家族法の裁判って“No-Win, No-Fee”でやってもらえるの?
『No-Win, No-Feeで受けてもらえますか?』というご質問をいただくことがあります。俗に言う、“No-Win, No-Fee”とは、裁判で相手方に勝った場合にのみ弁護士費用を支払うという意味で、つまり勝訴して相手側から目的金額を得られなければ弁護士費用は払わなくてよい、いわば、『成功報酬』ベースで弁護士を依頼することです。この“No-Win, No-Fee”のフレーズは損害賠償請求や遺産申し立てなどの民事訴訟を取り扱う法律事務所の宣伝文句としてよく使われています。家族法の裁判も民事訴訟の一つなのですが、このフレーズを見かけることはありません。ニーズは確実に高いはずであるのに、なぜどこの事務所も成功報酬を謳っていないのでしょうか。
成功報酬型費用形態を弁護士が提示する際の条件は関連法律に規定されていますが、その法律の中で家族法は成功報酬型で受任することが禁止されています。禁止の理由や背景は明示されていませんが、一つには、弁護士が率先して訴訟を持ちかけるのを未然に防ぐ目的があると考えられます。またそもそも、家族法の訴訟ではどの要素においても結果的に当事者はどちらも何かを失う、つまり『負』の状態になります。因みに、ここが損害賠償請求訴訟などその他の民事訴訟と性質的に大きく異なる点です。また、特に子供に関しては、養育は親の『義務』であり、『権利』ではないため、争いが終わっても『勝ち取る』ものはありません。これも理屈の一つであるといえるでしょう。
禁止されているとはいっても、実際に家族法案件を依頼せざるを得ない状況であるのに、その時点で弁護士費用が工面できないことは大いにあり得ます。今日、明日の生活を優先せざるを得ない状況に立たされていることもあるでしょう。そうした際弁護士は、成功報酬型は無理でも、状況に応じて料金後払い型で案件を受任する場合があります。つまり、費用の支払いは財産分割の終了、第三者からの資金調達があるまで待つ、等とした条件で法務を受任することで、これは成功報酬型とは性質が異なるため問題とはなりません。妥協せずに弁護士を依頼する為に、自分の境遇に見合った条件で受任してもらえるべく話し合うことが肝心です。