
遺言書作成時によくある質問③
今回はスーパーアニュエイションの扱いについて解説します。勘違いされている場合も多いのですが、遺言書で分配を決める資産の中に特別に記載がない限り、原則としてスーパーアニュエイションは遺言書でカバーされる遺産には含まれません。スーパーアニュエイションにはTrusteeがいますので、故人の死亡時の残高や生命保険についてはTrusteeが分配先を決定する裁量権を持っています。一般的には、”扶養家族”とされる、配偶者や子供、また故人に扶養されていた人物が受取人の資格を持ちます。皆さんがご自身のファンドのウェブサイトにアクセスし、簡易的に相続人を指名することはできますが、こういった方法は”non-binding...
遺言書作成時によくある質問②
家族の中で不平等な分配をする場合今回は関係が悪く疎遠になっている子供に相続させたくない、または、複数の子供の間で異なる分配比率を希望する場合について解説します。自身の財産を死後、誰にどの程度分配して欲しいかを遺言で自由に表明することは可能です。ただ、相続人から外れた、または相続額が極端に少ない子供が遺言書の内容に不服申し立てを請求する権利は法律上認められており、遺言書で彼らの権利を完全に奪うことは難しいのも事実です。不平等な相続であったとしても当人が遺言書の内容に納得していれば良いですが、実際に子供がどうするかは遺言書を作成した本人が死亡した後になってみないとわかりません。子供以外にも、財産分割をせずに別れた元配偶者や、故人と同居しかつ経済的に故人に依存していた人物にも法律上請求権は認められています。遺言書の中で分配しない理由を説明したり、気持ち程度の少額の遺産を遺す内容の遺言書を作...
遺言書作成時によくある質問①
遺言書作成時にお問合せの多い内容について取り上げ解説します。1. 日本にも資産がある場合日本にも不動産や銀行預金、株などの資産を持っている場合、オーストラリアと日本は法制度が全く異なりますので資産のあるそれぞれの国で遺言書を作成しておくことをお勧めしています。どちらの国で亡くなるか、不動産があるかどうかなど、個々の事情により一方の国で作成した遺言書だけで全ての遺産をカバーするには不十分である可能性が高く、相続手続きが複雑になるリスクが高くなるからです。International Willというものも存在しますが、日本はその協定に参加しておりませんし、全ての国で有効となるように遺言書の内容、様式を担保することは簡単ではありません。そのため、それぞれ資産のある国ごとに有効な遺言書を作成しておく方が安全です。2....
別居・離婚時における片親阻害行為について
別居や離婚は当事者同士にとって辛いことですが、子供にとっても悲しい経験です。しかも当事者同士のいがみ合いに何の罪もない子供が巻き込まれてしまうと子供は更に傷つくことになります。親の一方が子供の気持ちを巧みに操ることでもう一方の親に対し敵意や嫌悪感を抱くように仕向け、それまでの親子の関係を壊し、子供の心を傷つけてしまう状態を片親阻害(または切り離し)と言います。具体的な例として、子供の前で相手の悪口を言う、離婚の原因は相手のせいだと子供に話す、自分と一緒にいない時の相手の行動を報告させる、自分の味方になるよう仕向ける、などの行為が挙げられます。これは子供の気持ちよりも相手への仕返しや恨みといった、自分の感情を優先する行為です。以前は大好きだった親のことを具体的な理由もなく突然嫌いだ、会いたくないと言ったり、大人の口真似をして片親を否定したりする場合、片親が引き離し行為を行っている可能性...
2025年6月に導入される家族法の改正について
2024年12月10日、家族法改正案が両院を通過し、多くの改正法が今年6月10日に施行となります。その中でも注目すべき改正内容について解説します。財産分割と家庭内暴力今回の改正法の中でも最も重要な改正は、家庭内暴力が財産分割の決定に影響すること、特に経済的虐待も家庭内暴力である、ということが明文化されたことです。経済的虐待の例として、配偶者の財産を一方的に管理すること、勝手にまたは自身の意に沿わない負債を負わせること、働いて収入を得ることを妨げること、経済的に自分に依存している配偶者に対し合理的な理由なく意図的に最低限必要な生活費を渡さないなどの行為が含まれます。6月からは家庭内暴力の影響が分割比率を決める判断理由に追加されるため、暴力や虐待の被害者は客観的な証拠提出をすることで、裁判所が家庭内暴力の存在を判断でき、その結果より多くの財産を得ることができるようになると考えられます。財...
豪州政府、新たな「スキルズ・イン・デマンド(SID)」ビザの導入を発表
一時滞在の就労ビザの柱であるSubclass 482について、年内改正が予告されていましたが、ついに2024年12月7日付で「一時的スキル不足(TSS)」ビザに代わり、「スキルズ・イン・デマンド(SID)」ビザが導入されました。この新ビザでは、海外の優秀な人材をより容易に確保する仕組みを提供し、永住権への道も簡略化される方向性となっています。なお、改正に伴いビザのサブクラス番号の変更が予想されていましたが、実際には変更はなく、従来と同じSubclass 482のままとなりました。主な改正ポイント有効期間の柔軟性: すべての申請者が一度の申請で最大4年間有効なビザを取得可能。永住権への移行: 永住ビザ(Subclass 186)へのスムーズな移行が可能。職歴要件の緩和:...
年末年始の休業日について
下記の期間を年末年始の休業日とさせて頂きます。休業期間:2024年12月21日(土)~2025年1月19日(日)年始営業は2025年1月20日(月)からとなっております。ご不便をお掛け致しますが、何卒ご理解をよろしくお願いいたします。
ワーキングホリデービザのキャンセル案件の緊急解説と注意喚起
2024年8月に入ってから、「日本に一時帰国中にワーキングホリデービザが突然キャンセルされた」や「ビザ取得後、出発直前にワーキングホリデービザがキャンセルされた」といった事案が発生しており、SNSを発端にその話が広まり、当事者からの報告や相談が急増しています。この事態により、豪州国内外の日本人関係者の間で大きな混乱と不安が広がっています。そこで、現時点で当所が確認した情報を以下にまとめます。共通点1.日本の某留学エージェントのワーキングホリデービザ申請代行サービスを利用(OMARA-Office of Migration Agents Registration...
遺言改定の大切さ
皆さんは遺言を持っていますか?遺言の必要性が年齢に関係しないことは方々で言われていることですので、今更強調する必要もないことと思います。そこで今回は遺言を改定することがいかに大切であるかについてお話したいと思います。最近こういう話を耳にしました。ディファクト関係にあった一方の配偶者が関係破綻を機に家を出たその足で交通事故に遭ってしまい、そのまま亡くなってしまったという不運な出来事です。このケースでは様々なパターンが考えられますが、ここでは、故人が①ディファクト関係前に遺言を作成していたが、破綻後に改定していなかった、②関係期間中に遺言を作成したが、破綻後に改定しなかった、③存命中一切遺言は作成しなかった、という3つのパターンについて考えてみます。①の場合には、ディファクト関係開始と同時に被遺贈者の規定がディファクト配偶者に置き換わっています。その後、遺言が改定されなかったので、遺言上...
シートベルトカメラの新導入
運転の際のシートベルト着用の義務は今や誰しもが知っていることだと思います。実にNSW州では運転手の着用は50年も前から義務付けられていることで、近年に至っては同乗者全てに対して着用が義務付けられており、同乗者のシートベルト不着用は運転手のライセンス義務違反として処罰を受ける対象となっています。最近、ある短期滞在者からお電話を受けました。話によると、助手席に同乗した際シートベルトを着用していなかった為、運転手が多大な罰金及びダブル失点を受けてしまったということでした。助手席に乗り込んだ後すぐに眠ってしまったためシートベルトが着用できなかったということでしたが、無罪放免にしてもらうことはできるか、ということがご質問でした。カメラによる取り締まりであり、また着用免除対象となりえる病気や障害などをお持ちの方ではなかったため、残念ながら回答はノーとなることを電話口でご説明しました。NSW州では...
家族法の裁判って“No-Win, No-Fee”でやってもらえるの?
『No-Win, No-Feeで受けてもらえますか?』というご質問をいただくことがあります。俗に言う、“No-Win, No-Fee”とは、裁判で相手方に勝った場合にのみ弁護士費用を支払うという意味で、つまり勝訴して相手側から目的金額を得られなければ弁護士費用は払わなくてよい、いわば、『成功報酬』ベースで弁護士を依頼することです。この“No-Win,...