
別居・離婚時における片親阻害行為について
別居や離婚は当事者同士にとって辛いことですが、子供にとっても悲しい経験です。しかも当事者同士のいがみ合いに何の罪もない子供が巻き込まれてしまうと子供は更に傷つくことになります。親の一方が子供の気持ちを巧みに操ることでもう一方の親に対し敵意や嫌悪感を抱くように仕向け、それまでの親子の関係を壊し、子供の心を傷つけてしまう状態を片親阻害(または切り離し)と言います。具体的な例として、子供の前で相手の悪口を言う、離婚の原因は相手のせいだと子供に話す、自分と一緒にいない時の相手の行動を報告させる、自分の味方になるよう仕向ける、などの行為が挙げられます。これは子供の気持ちよりも相手への仕返しや恨みといった、自分の感情を優先する行為です。以前は大好きだった親のことを具体的な理由もなく突然嫌いだ、会いたくないと言ったり、大人の口真似をして片親を否定したりする場合、片親が引き離し行為を行っている可能性...
2025年6月に導入される家族法の改正について
2024年12月10日、家族法改正案が両院を通過し、多くの改正法が今年6月10日に施行となります。その中でも注目すべき改正内容について解説します。財産分割と家庭内暴力今回の改正法の中でも最も重要な改正は、家庭内暴力が財産分割の決定に影響すること、特に経済的虐待も家庭内暴力である、ということが明文化されたことです。経済的虐待の例として、配偶者の財産を一方的に管理すること、勝手にまたは自身の意に沿わない負債を負わせること、働いて収入を得ることを妨げること、経済的に自分に依存している配偶者に対し合理的な理由なく意図的に最低限必要な生活費を渡さないなどの行為が含まれます。6月からは家庭内暴力の影響が分割比率を決める判断理由に追加されるため、暴力や虐待の被害者は客観的な証拠提出をすることで、裁判所が家庭内暴力の存在を判断でき、その結果より多くの財産を得ることができるようになると考えられます。財...
家族法の改正について
5月6日、家族法の改正法が施行します。現在日本では選択的共同親権の導入が衆議院を通過したことが大きく報じられていますが、今回の法改正では2006年に導入された『平等な共同親責任』という推定原則の廃止が決まりました。平等な共同親責任原則は、家庭内暴力などの場合を除き、教育、宗教、住む場所、医療といった子供にとって重要な決定を両親が共同で決める責任を負うことが子供にとって最大の利益となるという考え方です。2006年にこの推定原則が導入された背景には、それまで母親が優先され、父親の子供の養育への関与がないがしろにされてきたという声に応える目的がありました。それから過去20年近く、家庭裁判所はこの原則に基づいて養育についての紛争に対応してきました。今回この原則が廃止されることになった大きな原因は、この原則が誤って理解されてきたケースが多かったからです。元来、子供に関する重要な決定について共同...
財産分割とそれに関わる税金の注意点
パートナーとの関係が破綻し財産分割を行う際、最も高額な資産は不動産というケースがほとんどです。そのため、不動産を売却して売却益を分割する、或いは一方に名義変更を行う代わりに名義を譲渡する側が現金を受け取る、といった形で財産分割を行う場合が多く見られますが、分割案を検討する際に課税リスクに気付かないことがあります。その結果、公平な分割案をまとめたつもりが、後で一方が高額の税金を支払うことになって不満が残る場合もあるのです。不動産の譲渡には通常取得の際の印紙税、処分の際のキャピタルゲイン税の支払いが必要となりますが、婚姻関係破綻による不動産の譲渡の場合、優遇措置が存在します。従って共有名義の不動産を一方に譲渡する場合や、単独で保有していた不動産を相手に譲渡する場合、譲渡される側には印紙税は発生しません。キャピタルゲイン税についてはどうでしょうか。キャピタルゲイン税とは1985年9月20日...
オーストラリア法律相談:離婚の際の資産分配はどうなる? その①
質問:オーストラリアで離婚する際、夫婦の資産はどのようにして分配されるのでしょうか。よく50/50だと聞きますが、そんな単純なものではないように思います。(主婦:48歳)