
遺言書作成時によくある質問③
今回はスーパーアニュエイションの扱いについて解説します。
勘違いされている場合も多いのですが、遺言書で分配を決める資産の中に特別に記載がない限り、原則としてスーパーアニュエイションは遺言書でカバーされる遺産には含まれません。
スーパーアニュエイションにはTrusteeがいますので、故人の死亡時の残高や生命保険についてはTrusteeが分配先を決定する裁量権を持っています。一般的には、”扶養家族”とされる、配偶者や子供、また故人に扶養されていた人物が受取人の資格を持ちます。皆さんがご自身のファンドのウェブサイトにアクセスし、簡易的に相続人を指名することはできますが、こういった方法は”non-binding nomination”と言い、Trusteeを拘束することはできません。つまりTrusteeの判断で故人が任命した人とは別の人物に支払いを行うこともあり得ます。一方”binding nomination” を行うと、Trusteeはその任命に従わなくてはなりませんが、誰でも受取人に指名できるのではなく、扶養家族の定義を満たすカテゴリーの人に限定されます。そのため配偶者やお子さんがいない場合、指名できる人物がいないためEstate を指名することになります。そうすることでスーパーアニュエイションの資産が遺言書で任命された管財人の管理下に入ることになり、遺言書に従った分配が行われることになります。
最近の判例では、母親のスーパーアニュエイションが全額再婚した夫に支払われ、前夫との間の息子に支払われなかったことに対し、息子が裁判を起こしたものの裁判所は息子の訴えを却下した、というニュースがありました。このケースでは死亡した母親はスーパーアニュエイションに対し、再婚した夫を相続人に任命しており、電話を含め2度その意思を示していました。この任命は上述したTrusteeを拘束する”binding nomination”ではありませんでしたが、Trusteeが相続人を決める際に重要な判断要因となったと説明しました。裁判所はまた、訴えを起こした子供は経済的に母親に依存しておらず、スーパーアニュエイションが貰えなかったことで困窮しているわけでもないことも今回裁判所が息子の訴えを却下した理由に挙げています。
息子は更に、母親と再婚相手の夫は互いを相続人とする遺言書を作成していたが、母親の死後、夫がすぐに遺言書を書き換えて夫の子供達を相続人としたため、母親の残した遺産も含め全てが夫の前妻との子供にわたることになり、あまりにも不公平であると訴えました。息子の主張は確かに心情的に理解できますが、残念ながらこの夫の行動には法律上全く問題はありません。子供のいる再婚同士のカップルにはこういった問題が起きるリスクがありますので、自分の希望する人物に必ず財産がわたるようにするには、遺言トラストなどを準備する、生前に財産を渡しておくなども検討すべきでしょう。もし確実に自分の希望する人物にスーパーアニュエイションを遺したいのであれば、”Binding Nomination”をしておくことです。ファンドによっては”Binding Nomination”は3年ごとの更新が必要なタイプと無期限のタイプがあります。ご自身のファンドがどちらのタイプなのかを確認し、ご自身の希望が確実に叶うよう準備しておくことを忘れないようにしましょう。