日本から当地にある銀行口座にアクセスする際の問題点
当地に以前留学や仕事で滞在した方、永住している家族を訪問した方など、オーストラリアの金利が日本よりも有利な時代に当地で銀行口座を開設し、まとまった金額を銀行に残したまま日本に帰国した方々からのお問い合わせを受けることがあります。
銀行口座を閉鎖して日本の自分の口座に送金したい、資金の一部を動かしたい、確定申告で必要なので利子収入を知りたいが銀行からのステートメントが届かない、などの場合です。インターネットバンキングを利用できれば良いのですが、携帯番号での認証が必要であったりなど、ネットバンキングを設定することもできない場合、資金を動かしたり情報を更新したりすることができません。このような場合、通常は電話での指示や支店での対面取引をすることになりますが、健康上の理由などで当地に来ることのできない方、英語が不得意な方は、日本から銀行に電話をするしかありません。その場合日本語の通訳を銀行がアレンジしてくれますが、電話が通じないことも多いのが実情です。
上記の理由から、弁護士に代理人として銀行と交渉して欲しい、というご依頼を受けるのですが、口座保有者本人が支店を訪れることができない場合、銀行に第三者を代理人として認めてもらうことは簡単ではありません。昨今詐欺やマネーロンダリングの横行を理由に、銀行の本人確認が大変厳格になっています。更に口座保有者が高齢者の場合には判断能力の有無が問題になることもあります。
委任状の準備だけでなく、本人確認書類を公証人役場やオーストラリア大使館にて認証してもらう手続きが必要であり、その原本を銀行に提出し、代理人の認可および希望する指示について銀行内での審査手続きを経ることになります。銀行ごとに審査基準が異なることもあり、手続きには相当の時間を要します。こうした費用や時間を考慮すれば、ご本人が当地に来て自身で手続きを行う方がずっと効率的であることは間違いありません。
口座を閉鎖する場合には、資金の受領先である日本の銀行にも連絡をすることが必要です。日本の銀行側もマネーロンダリングの問題に神経質になっており、大金が送金されてくる理由などを説明することが求められます。
上記のような手続きを採らなければ、銀行口座は口座保有者が他界して初めてアクセスが可能となります。その場合、近親者が除籍やその英訳などと共に銀行に通知を行い、プロベートが必要かどうか、預金額はいくらなのか、などを銀行に問い合わせることになります。プロベートが必要であれば当地にてその手続きを弁護士に依頼することとなり、プロベートが必要でなくても管財人の本人確認手続きなどを経て口座の閉鎖および日本への送金が行われることとなります。