不動産購入の流れについて(2)物件調査と決済まで
頭金を支払い、不動産購入の契約にサインした後は、どのようなことが行われるのでしょうか。 前回に続き、今回は不動産購入の物件調査と契約締結(Exchange of Contract)から決済(Settlement) までの流れについて解説します。
物件調査レポートの精査
物件はそのままの状態で購入という前提になっているため、契約締結後に見つかった物件の欠陥を根拠に契約を破棄することは基本的にはできません。
契約書にサインした直後に建物の調査レポートや 害虫調査レポートを手配し、建物やユニット内に構造上の問題があるか・害虫の問題があるかなどを確認したり、ユニットであれば、ストラタレポートを入手し、大きな修繕の予定があるかや訴訟中の問題があるかなどをチェックすることが重要です。内容次第では、クーリングオフ期間であれば、契約を取り消すことができるからです。こうした調査資料についても弁護士に精査を依頼することで、自分自身では判断できない問題点などを見つけてもらうことが可能です。
オークションでの購入の場合、クーリングオフの権利がないため、こうした調査は契約締結以前に行うことが肝要です。
ローン書類の準備
金融機関から借り入れを行う場合、ローン書類を金融機関の要請に従い作成します。弁護士と金融機関がやり取りしますので、担当者がわかるよう買主が連絡先を通知するとスムーズに手続きが進むでしょう。
印紙税はどのくらい?
買主は物件の購入価格に従って印紙税(stamp duty またはtransfer duty)を収める義務があります。印紙税の支払いは決済時に行われます。
First Home Buyer Assistance Scheme
初めてマイホーム物件を購入する際は、州ごとに設置されているFirst Home Buyers Assistance Scheme の申請をします。市民権保持者だけでなく永住権保持者でも申請資格があります。NSW州では、今年の7月31日までであれば、65万ドル以下の中古物件、80万ドル以下の新築物件であれば、印紙税が免除になります。また、この金額を超えていても80万ドル以下の中古物件、100万ドル以下の新築物件であれば、印紙税が減額されます。
First Home Owner’s Grant (New Homes) scheme
州ごとに初めてのマイホーム購入者への補助金制度もあります。2021年4月現在では、NSW州では新築の物件を購入する(60万ドル以下)もしくは土地に新築の家を建てる(土地と家の建築費合計75万ドル以下)という場合のみが対象となり、1万ドルの補助金が支給されます。州ごとに細かな条件が付いていますので、この補助金の受給資格の有無については、ローンを組む金融機関および州のRevenue Officeのウェブサイトを確認してみましょう。
いよいよ決済に
決済とは売買契約が完了する時点のプロセスのことで、この時点で売主は売却価格を受取り、買主は所有権を手にします。通常契約時に決済日が指定されますが、実際には様々な理由で指定の日に決済が行われないことも珍しくありません。 決済が予定日通りに行われそうかを弁護士と確認しながら、引っ越し・入居の予定を立てることをお勧めします。また、買主側の都合で決済が遅れる場合、ペナルティーが発生するので注意が必要です。
決済日前に、最終内見をして、物件の状態が契約締結時と同じであるかを確認することが大切です。できれば不動産のエージェントに同行してもらうようにしましょう。いつ内見をすべきかはケースバイケースです。 例えば物件にテナントがいた場合は、契約締結後にテナントが原因でできた汚れや傷を確認するためにも、テナントが退室した後に内見することが良い場合もあります。内見のタイミングは弁護士に相談しましょう。
近年はオンライン決済が行われているため、買主自身が決済に立ち会う必要はありません。決済日に合わせて、買主側の弁護士が水道代や地方税、ストラタ費用などについて売主と買主の負担額を調整し、最終的な決済金額を売主側の弁護士と確認し合います。
無事に決済が終了すると、弁護士から通知がありますので、エージェントから鍵を入手しましょう。現在権利証は電子化されており、ローンがない場合は弁護士が、ローンがある場合は借入先の金融機関が権利証を保管することになります。ご自身の名義になっていることを確認したい場合、各州の登記所のサイトなどで権利証のコピーを購入することも可能です。
光熱サービス関係の名義変更は?
決済後、水道や地方自治体などの各機関に家主変更通知がなされます。ただし、光熱サービス関係の契約はご自身で行う必要があります。
保険のカバーはいつから?
契約締結時に買主はデポジットを支払っており、物件に対する権利が発生しているため、一軒家の場合は契約後すぐに建物保険(Building Insurance)に加入することをお勧めします。売主が保険に入っていたとしても十分なカバーがない場合もあるからです。また、ローンの条件として保険加入が必要となる場合も多くあります。投資物件としての購入であれば、決済後に家主保険(Landlord Insurance)に変更しましょう。
ユニットの物件の場合は、マンションのオーナー組合が建物の保険には入っているので、入居日から家財保険(Home Contents)への加入を必要に応じて考慮する必要があります。
以上が住宅不動産購入の一般的な過程と注意事項の概略としますが、契約は千差万別であり、専門家のアドバイスを受けることが不可欠であることは言うまでもありません。