
遺言書作成時によくある質問②
家族の中で不平等な分配をする場合
今回は関係が悪く疎遠になっている子供に相続させたくない、または、複数の子供の間で異なる分配比率を希望する場合について解説します。
自身の財産を死後、誰にどの程度分配して欲しいかを遺言で自由に表明することは可能です。ただ、相続人から外れた、または相続額が極端に少ない子供が遺言書の内容に不服申し立てを請求する権利は法律上認められており、遺言書で彼らの権利を完全に奪うことは難しいのも事実です。不平等な相続であったとしても当人が遺言書の内容に納得していれば良いですが、実際に子供がどうするかは遺言書を作成した本人が死亡した後になってみないとわかりません。子供以外にも、財産分割をせずに別れた元配偶者や、故人と同居しかつ経済的に故人に依存していた人物にも法律上請求権は認められています。
遺言書の中で分配しない理由を説明したり、気持ち程度の少額の遺産を遺す内容の遺言書を作成したとしても、相続人である彼らの権利を奪う効果はほとんどありません。対策として、生前に遺言書について説明しておく、予め一定の贈与をしておくことなど考えられますが、いずれにしても自身の死後のことを完全にコントロールすることはできません。
一方、遺言書内容に納得できない相続人の不服申し立てが必ず認められるかどうかは全く別の問題です。こうした相続人の権利行使の申立ては遺産の管財人に対して行われることになりますが、申し立てをする側はなぜ遺言とは異なる分配が必要なのか、故人との関係や遺産の規模、自身の経済状況、故人からの過去の経済的援助など、様々な角度から分配を受ける正当性を説明することが求められます。基本的には管財人との交渉や調停などで解決することになりますが、仮に和解できない場合には州最高裁判所への申立が必要となるので多額の裁判費用がかかります。更に、管財人が紛争解決のために使う弁護士費用などは全て遺産から支払われることになりますので、裁判所での解決となった場合、遺産の規模によっては最終的に分配できるような遺産が残らない可能性もあります。
遺言書は自身の財産を誰にどのように相続して欲しいかを表明できる唯一の書類です。残された家族のためにも法的アドバイスを受けたうえで遺言書を作成することをお勧めいたします。