
遺言書作成時によくある質問①
遺言書作成時にお問合せの多い内容について取り上げ解説します。
1. 日本にも資産がある場合
日本にも不動産や銀行預金、株などの資産を持っている場合、オーストラリアと日本は法制度が全く異なりますので資産のあるそれぞれの国で遺言書を作成しておくことをお勧めしています。
どちらの国で亡くなるか、不動産があるかどうかなど、個々の事情により一方の国で作成した遺言書だけで全ての遺産をカバーするには不十分である可能性が高く、相続手続きが複雑になるリスクが高くなるからです。International Willというものも存在しますが、日本はその協定に参加しておりませんし、全ての国で有効となるように遺言書の内容、様式を担保することは簡単ではありません。そのため、それぞれ資産のある国ごとに有効な遺言書を作成しておく方が安全です。
2. 配偶者と同時に亡くなった場合
配偶者同士がお互いを遺産の管財人、相続人とする内容の遺言書を作成するケースは多く、夫婦が同時に亡くなった場合の相続がどうなるか、というご質問を受けることがあります。交通事故や飛行機事故、天災など可能性としては低くとも、不幸にも夫婦がほぼ同時に亡くなる場合はあるでしょう。その場合どちらが先に死亡したのか判断がつかない、つまりどちらが相続人となるかわからないという問題が発生します。
死亡した順番がわからない場合、各州やテリトリーの法律では、原則として年長者が先に死亡したという推定原則を規定しています。しかしながら、同時、または短期間の間に二人が死亡してしまう場合、相続手続きが二度発生することになり遺族にとっては大きな負担となります。こうした不便や費用負担を軽減するため、相続人は故人より30日以上生存しなくてはならない、という生存条件が法律で規定されており、この生存条件は一般的な遺言書の条項としても使われています。
つまり、配偶者Aの死亡後29日後に残った配偶者Bが死亡した場合、生存していた配偶者Bは先に死亡した配偶者Aよりも前に死亡したと見なされ、生存条件を満たさないとして相続を受けることはできません。その場合、先に死亡した配偶者Aの遺言書における配偶者Bの次の相続人が故人より30日以上生存している条件を満たしていれば遺産を受け取ることになります。逆に配偶者Bの死亡時期が配偶者Aの死後30日後だった場合、生存配偶者Bがまず相続人となり、先に死亡した配偶者Aの遺産も含め、配偶者Bの二番目の相続人が全てを相続することになります。もしこの夫婦が再婚でそれぞれに前の結婚での子供がおり、二番目の相続人をそれらの子供にしている場合、どちらが先に死亡したと見なされるかによって、子供たちの相続の権利が大きく変わってしまうリスクがあります。 遺言書は自身の財産をどう分配して欲しいかという意思を表明できる唯一の書類です。100%思った通りに遺産が分配されることを担保できるかどうかは、状況により異なりますので、専門家への相談をお勧めいたします。